365分の1

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まだぎりぎり夏休み

でも宿題はまだ少し(とは言えないかもしれない位)残っていて、
部活も、まだまだきつくて。
・・・と言っても、俺と仙道と監督とで練習メニュー決めてるんだから、
きついのは本望だ。

夏は終わった。
けど、まだまだこれから。
冬の選抜だってある。
そして、俺たちには来年がある。


夏休みは、切り替えの季節。


ん?

でも、今日はもっと大事な事があったような。




なんだっけ?

まぁ、そんなに大事だったらその内思い出すだろ。

さーて、部活頑張るか!


◆◆◆



もう少しで、新学期が始まる。

宿題はもう大体終わった。(早めにちょっとずつやってたから。)
部活も自分なりに頑張っている。
来年は、全国に行けるかな・・・。
いや、行けるようにするんだ。
俺は仙道みたいに凄い選手じゃないけど、試合に欠かせない選手になってきてる。
こつこつ、自分なりに、陵南に貢献する。
選抜や来年には、陵南は全国区の凄い学校だって知られるように。
主役じゃなくていいから、
陵南のバスケ部員のスタメンとして、コートに立てれば。
俺の高校生活は、きっと、一生忘れられない思い出になるだろう。

今日は、あの人の誕生日だよね。
越野は思い出してないみたいだけど、もうちょっと黙ってようかな?

よし、部活頑張ろう。



◆◆◆


部活後。




「うぁーっ、今日もきつかったなー・・・」
ぐいーっと腕を伸ばして、越野が言った。

まだ、何か考えているようだ。

「そういえば、宿題終わったの?もうすぐ新学期だね。」
越野は、ちょっと青ざめた。
・・・やべ、まだ残ってる。植草は?」
植草はちょっと余裕、って風に、
「うーん、もう大体終わった。あとは社会の調べ物が少し残ってるだけ。」
と、さらっと言った。
「そっかー・・・。俺もがんばろ。明日は部活ないから出来るし。」
越野はどうしても部活を優先してしまうので、宿題まで手がまわらない日がよくあった。

だから、この有様。


・・・まだ思い出さないかなぁ。」
植草が、ぽつり、と小声で言った。
・・・何を?俺もなんか忘れてる気がしてさー。」
やっぱり、まだ考えてたようだ。
「早く思い出さなきゃ、悲しむよー?」
クスッと楽しそうに笑う。
植草は、越野が必死に思い出そうとしているものの答えを知っている。
当然、陵南もほとんどの人が知っていた。
彦一なんて、何日も前からプレゼントを用意していた。
仙道も知っていたけど、最近自分より植草が贔屓されている気がして、ちょっと拗ねていた。

つまり、越野だけが忘れているということ。


「一番覚えていて欲しい人に忘れられてるなんて、可哀相・・・」
え?俺?と越野は不思議に思った。
そして、思い出そうと頑張っていた。


「これだけ言っても分かんないかな・・・。仙道と立場いれかわっちゃうよ。」
ちょっと呆れた声で、植草が言った。
仙道と立場逆転なんて絶対やだ。あんなふわふわした奴といれかわってたまるか。
「ヒント1ー。女の子ー。」
女?!
越野は余計混乱した。
「ヒント2ー。剣道ー。」
剣道?!
俺の知り合いに剣道なんてやってる奴いたっけか、と、
越野は余計深いところまで記憶の糸をたどっていた。
「ヒント3ー。越野の髪質とか藤真さんの太ももが好きー。」
誰だそんな奴!俺の知り合いにいたか!?
女の子で剣道で髪質と太もも!?
意味わかんねえ。
越野の混乱&イライラは絶頂に近かった。
・・・これだけ言っても分からなかった?じゃあ、最後のヒント。
今日、何月何日?」
最大のヒントで、考えようにはヒントにもならないヒント。

「何日って8月26日・・・ってあぁ!!」

やっと、気付いたようだ。


「今日弓梁の誕生日だろ!?うわー俺マジ馬鹿!何で忘れてんだよ!」


「ほら、気付いたんならお祝いの言葉。あさなら、絶対聞こえるから。」
それも変な話なのだが。
聞こえるものは、聞こえる。



「えーと。」
普段言いなれてない言葉だから、少し照れながら俯き加減で。







「誕生日、おめでとう。」




一年に一回の、その言葉を。







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誕生日祝いに、有耶無耶の椛葵さんから頂きました!

越野の髪質と藤真さんの太ももが好きな弓梁です デヘヘ^^b
意味分かんねぇって言われちゃった〜照れる!照れるから!
しかも越野さんが「弓梁」だって…!植草が「あさ」だって…!!!
どうしよう!私どうしよう!幸せ独り占めできて嬉しいです。
椛さんの書かれる小説はヤバいくらいツボなので本当に大好き。
中でも椛さんの植草は私のイメージ通りで、読むたびに植草好き度が
ぐーんと上がってます!!
むしろ椛さん本人が大好きです♪

椛さん、本当にありがとうございました!!