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暇つぶしゲーム
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問題集と真剣ににらめっこしていると隣で頭を捻らせていた藤真がクチャクチャに丸めたノート紙を渡してきた。
「はい」
「・・・何だ?」
「何ってゴミだよ。見てわからない?」
俺はもう直あるテストの為に藤真の家に招かれた。彼のたまりにたまった提出物を制覇しなければならないからだ。俺には全く関係ないのだが、「手伝え」と絶対的な圧力をかけられると逃れることができなかった。そして俺は無関係だが藤真の為にせっせと彼の最も苦手な数学の問題集をやっている。
なのにこれだ。
折角代わりにやってあげているというのに、更に俺に無駄な労力を使わせてくる。
「・・・これを捨てて来いっていうのか?」
「うん。だってお前の方がゴミ箱に近い位置にいるだろ?」
そう言って、部屋の隅にあるゴミ箱を指差した。手持ち無沙汰にシャーペンをクルクル回し、俺に紙くずを押し付ける。自分で捨てに行く気は毛頭ないようだ。
「近いっていっても手を伸ばしたって届かないじゃないか!それぐらい自分でやれ!」
「いいじゃん!俺は今化学の問題を解くのに忙しいんだよ!」
「俺だってお前の宿題をやってやってるだろ!」
「数学なんてお前にとってはお手のものだろ?ならちょっとぐらい俺の分を手伝ったってバチはあたらないさ」
「あのなぁ・・・」
口では抗議の声をあげながらも、何故か受け取ってしまう自分が悲しくなってきた。最初から藤真に敵うわけがないのだ。そうじゃなければ今頃こんなところで彼の問題集なんて手伝ってないだろう。
いちいち立ち上がって捨てに行くのも悔しいので、その場から動かず、シュートの要領で紙くずをゴミ箱に向かって放り投げた。 手から離れた紙くずは弧を描いてゴミ箱に吸い込まれていった。その後、ポスッという音を立てて空の底に着陸した。見ていた藤真からは感嘆の息がこぼれる。
「ナイッシュ!俺も最初からそうすりゃよかったな〜!!」
俺のどうってことない行動に藤真は何故かやけに喜んで、白紙のノートをちぎり始めた。 さっきと同じように丸め、俺と同じようにゴミ箱に向かって放った紙くずは、やっぱり綺麗にゴミ箱に落ちていった。まるでゴミ箱が引力で紙くずを引き寄せているように。
「よぅし!入った!!ハイ次お前もう一回!」
「は?何言って・・・」
「いいから!先に外した方がジュース奢りな☆」
言いながらどんどんノートをちぎっていく。
藤真からしてみればどんなことでも遊びなのだ。そんな遊びとも言えない遊びをしている時の藤真は本当に楽しそうで見てるこっちも何だか楽しい気分になっていく。
藤真は更に悪戯っぽい笑みを見せた。
「・・・仕方ないなぁ」
当初の目的を忘れ、二人して紙くずフリースローに夢中になった。
さすがバスケ部員だけのことはある。藤真は中々外す気配を見せない。かといって俺だって負ける気はしない。俺が決める度に「もうちょっと左だったら落ちてたのにっ!」と残念そうに、でも楽しそうな藤真の笑い声が部屋中に響いた。
「ああああ!!!!」
段々遊びから真剣な勝負になってきた頃。突然藤真が素っ頓狂な声をあげた。
「化学のノートなくなったじゃんかー!!」
「あ・・・」
藤真の手元を見ると、無惨にも引きちぎられたノートが頼りない雰囲気を醸し出していた。ちぎって丸められた紙くずは全てきっちりゴミ箱の中に収まっている。気付けば、藤真は板書したページさえもボールにしていたのだった。
「ハハ、もう投げるボールがないということはこの勝負、引き分けだな!」
安心して一息吐いた。いつの間にかひどく緊張していたらしい。額から一粒の汗が流れ落ちた。手のひらを見ても汗が滲んでいて、こんなしょうもない遊びを真剣にやっていた自分達を想像して自嘲気味に笑った。
「ちょっと待てよ!ノート無駄にしちまったんだからな、弁償しろ!!」
「…はああ!!?」
「よし、今から文房具屋に行くぞ!!」
無惨な姿のノート(10分前まではそうだった)を最後にゴミ箱に投げ入れ、藤真は立ち上がった。
「何でそうなるんだ!お前が言い出したことじゃないか!!」
「先にやり出したのはお前だろ!!」
「それはお前が捨てろって言ったから〜・・・!」
「関係ない!兎に角買ってもらうからな!」
健闘むなしく俺はノートを買わされるハメになってしまった。そう、最初から藤真に敵う筈がないのだ。そうでなければ・・・(以下略)
宿題を手伝わされ、勝負に負けたわけでもないのにジュースよりも少し高い出費をし、きっと今日は厄日だったのだろう。そう割り切らなければ藤真とはこの先やっていけない。
藤真の満足そうな表情を見ていると怒る気も失せてきた。
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愉快な鼓動の有瀬柚希さんから頂きました!
この花形さんと藤真さんのやり取りは、文句なしに
私の脳内の2人と一致します!!!
なんでここまで しっくりくる小説が書けるんだろうなぁ…!!
すごいです有瀬さん!!本当にだいすきです!!
とにかく読んでいて とっても和やかになるお話でした。
しかも当時小説でカップリングを扱っていなかった私のために
わざわざ藤+花にしていただき、とても感激しました(つД`)・゜・
柚希さん、素敵な小説を本当にありがとうございました!!
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